中山間での米づくり③

先日稲刈りが終わった。 

植える時期も遅く、品種も違うので、大体他の方が終わってから一番最後になることが多い。 

ちなみにこの辺で作られている品種はさとじまんと言う銘柄。 作りやすく収量が多いのが特徴だ。 私のところはひのひかりと言う品種を作っている。 収量はさとじまんに及ばないが、食味に優れている、つまり美味しい。

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収穫間際に一度イノシシに入られた場所もあり、予想より収量は少なかったが、それでもほぼほぼ例年並みの収量があった。

 

脊振地区では台風9号 10号による倒伏とウンカで例年の4割の収量だったからそれに比べるとまあまあとれたと言えるだろう。 

 

うちは本業が養鶏家なので堆肥には鶏糞を使っている。鶏糞は窒素分が多く、米作りに使うとイモチ病が出やすいというのが定説だ。 

 

そこで春には入れずに秋、収穫が終わった後の荒起こしの時に、半年以上寝かせた完熟鶏糞を10アール(I反)あたり400キロまいている。 春には草が生えるので、そこでもある程度窒素分が吸収されるて考えている。 

肥料はそれだけで、化成肥料は使っていない。そういう訳で慣行農法の田んぼに比べると収量は少ないのだが、肥料代もかからないし、イモチ病も出たことがないし、ウンカの被害もない。 台風による倒伏もなかったのは身入りが少なかったので、稲穂が軽かったからだと思う。

倒れていたのも、ウンカにやられたのも、それまではびっしり実った豊作が期待された田んぼだった。

こういったやり方は取れる時は豊作だが、何かがあると凶作になったりと振れ幅が大きいと感じる。

 

地力や稲の力の8分めの力で長く続けられる農業が私の理想だ。とはいえ米作りはまだまだ決して自慢できるレベルでは無いので強くは言えない。

 

さて、前々回は中山間地域でお米づくりをしていたり、共同乾燥のオペレーターの仕事をしていて感じていること。 前回はその上で耕作放棄地が増えていく中で、その土地利用でどんな可能性があるか考えてみた。 まとめとなる今回は長年続けられてきた稲作を継続するにはどうしたら良いか、考えてみることにする。

 

コメの価格は下がり続けている。

気候変動による極端気象で安定して作れなくなっている。

高齢化と後継者不足で辞める人が増えてきている。

耕作放棄地が増え、それに伴いイノシシが増えて被害が拡大する。

やっている人のモチベーションが上がらず希望が持てない。

 

これだけ挙げただけでも八方塞がりで、今まで通りでは未来はないと思う。変わるしか無い時に差し掛かっている。 ではどうしたら良いのか?

 

様々な方法が模索され、活動されている方もいらっしゃるが、私は自分の頭で自分の地区の米作りをどうしたら良くして行けるか考えてみる。

 

あくまでも妄想の世界だが、脊振で土地を購入して農業を始めた時、いずれはこの問題にも向き合わなければならないと思っていたし、待ったなしの課題でもあり、ここ近年で方向性を決めなければならない避けては通れないと思っているので、このブログでもアウトプットしてブラッシュアップしてみたい。

 

中山間での稲作に活路を見出すために、付加価値をつけるにはどんな方法があるだろう?

私は大きく分けて3つの道があると思っている。

➕足す ➖引く ✖️かける

 

まずは➕ 足す

山は水が冷たく、その分収量は平野に劣るが美味しいと評判がある。一般市場に出荷するより、山のお米としてブランド化して販売すべきだと思う。

乾燥をハザがけで天日干しをすればさらに美味しく、ブランド力が増すと思う。

 

次は➖ 引く

ブランド力を増すために、農薬を減らす。

化成肥料を減らす。 農機具をシェアリングするなどして、機械代などのランニングコストを減らす。

しかし、無農薬、有機栽培は今のところ労力を➕しなければならないと感じる。

 

最後に✖️ かける

稲作と掛け合わせることで、相乗効果が期待出来るものとして、合鴨、泥鰌(どじょう)などがあると思う。除草効果もありつつ、鴨肉は魅力的だし、どじょうは高騰するウナギの代替え品としてのニーズが高まっている。飼育出来る場所が限定されるのと、技術、経験が必要ではある。

 

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✖️飲食店 お米が美味しいというのは飲食店にとって魅力的だし、集客が見込める要素になると思う。

飲食店(農家レストラン)を開設し、地産地消を進める。 ちなみに脊振の岩屋という場所にあるうどんやさんのおにぎりは、ご自分で作られた山のお米を出されていて、好評である。

 

✖️イベント 棚田は魅力があるし、田植えやイベントは農業体験として人気がある。参加者はエシカルな消費者になってくれる可能性が高いし、手間のかかる無農薬有機栽培などの手助けをしてもらえると思う。

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ここまで書いてみて、一発逆転のような奇策はないとしても、僅かな光明とでも言うべきものを感じる。 足し算、引き算、掛け算を組み合わせて付加価値をつけるのと同時に、労力やコストをかけずに継続させるには、さまざまな技術や知恵が必要だと思う。

 

例えば、スマート農業と呼ばれる農業のIT化やロボット化はドローンを使っての農薬散布など、慣行農法の延長と、市場をターゲットにしており、決してオーガニック市場を見てはいないが、水田除草ロボットがルンバの様に水田をスイスイ泳いで、自動的にあぜに設置された太陽パネルや用水路に設置されたマイクロ水力に充電に行く姿を想像するとワクワクする。

 

私としては、ニワトリを飼っていることもあり、近く食鳥処理場を作る計画があり、農家レストランもする予定なので、合鴨農法にチャレンジする予定である。 野生動物が多いので一筋縄ではいかないだろう。

 

また、現在餌に飼料米を使用しているが、さらに委託面積を増やす予定だ。飼料米は補助率が高く、使用先の畜産農家が確保出来れば中山間での土地利用に可能性があると思う。

現在は栽培面積は50アールほどだが、最終的には3ヘクタールくらいにはなると思う。

 

全国の中山間地区で同じく課題を抱えていることだろう。 わたしはわたしの場所でできることをやるのみだ。 

 

大海の大河の一滴だとは思うが、絵に書いた餅では無く、確かな一滴だと思い、取り組んで行きたい。