中山間での米作り②

共同乾燥のオペレーターの仕事も終盤。

今年の脊振地区の収量は例年の3分の1くらいの予想。 台風9.10号による強風での倒伏と、ウンカの被害で、かつてない不作だった。 

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じわじわとした減退は変化を生みにくいが、今年の様なディープインパクトは従来のやり方を見直す変化のチャンスではと私は思っている。

 

前回のブログでは私の住む佐賀県中山間地域でのお米を作りの現状について感じていることを書いてみた。 今のままでは担い手は減少し、それに伴い耕作放棄地が増え、食料自給率は下がるだろう。

あと10年がタイムリミットだというのが地元の方々の共通の認識だ。

 

ではどんな道が、可能性が残されているのだろうか。国は低迷する食糧自給率を向上させるための数値目標を立て、機械利用組合や集落営農の組織化、担い手の確保の為、人、農地プランを策定し、そこに補助をするなどの政策を行なっているが、あくまで「絵に描いた餅」である。

農水省のHPより。🔽

https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html

 

「事件は会議室で起こっているんじゃない!」

「現場で起きているんだ!」

何かの刑事ドラマのセリフにあったと思うが、あくまで現場の一農家として感じていること、そして自分の頭で考えてみたい。

 

中山間地域の農業の将来について考えてみた。

出た結論は大まかに分けて2つ。

 

①米づくりをやめて、別の土地利用を考える。

1 平野との高低差による栽培時期の差を活かした栽培により、付加価値を付けることが可能。 脊振ではほうれん草、ピーマンなどが行われている。

最も堅実な変化の様に思うが、施設園芸用のハウスを建てるにしても、土地の造成コスト、日照時間の短さ、冬の加温用燃料など平野に比べてもハンデもあるだろう。今の水稲栽培は兼業農家の方が多いが、この形態だと専業化せねばならず、担い手をどう確保するかという課題がある。

ソバやエゴマなどそのまま路地で出来そうなものもあるが、一個人では趣味の範囲で、地域のブランドに育てるには、部会を作ったり、出荷の施設を建てたり、販路を開拓したりかなり息の長い活動が必要の様な気がする。

 

2  エミューなどの放牧

耕作放棄地を活用した放牧には可能性はあると感じる。 豚、ヤギ、そしてエミューなど、草刈りがわりにもなるし、設備もワイヤーメッシュや電気柵などそれほどコストをかけずにはじめられる。

アニマルウェルフェアの観点からも、のびのびと育った家畜はブランドになりやすいかも知れない。

ただし、草だけで飼えるのはヤギくらいだろうし、(冬には草は生えないので購入する必要がある)餌代もかかるし、豚熱が発生したこともあり、放牧自体の規制が厳しくなる動きがある。

ちなみに佐賀県基山町にはエミューの放牧をしている農場がある。

https://kiyama-farm.com/ 

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一度代表の方とお会いしたことがあるのだが、エミュー由来の製品として付加価値があるのはお肉より脂肪で、アスリート向けの塗る鎮静剤としての需要があると聞いた時には驚いた。

 

3 太陽光発電 もしくは太陽光と農業のハイブリッドソーラーシェアリング

中山間はどうしても日照時間が短いので小規模ハイブリッド型の方が個人的には良いと思う。

 

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ソーラーパネルの下は日陰になるので、原木椎茸栽培などは相性が良さそうなので、いずれ取り組みたいと考えている。ただ自然エネルギーの売電価格は一時期よりも下がっているので費用対効果が見込めるかは不明。 災害時の非常用電源としてオフグリッドでも良いかも知れない。

 

4 原野化、山林化

最も消極的な変化。 中山間地域に点在する小さな面積の田んぼは水事情が悪かったり、日当たりも良くなかったり、作業効率も悪く、また人里から離れていて猪の被害にあいやすかったりと、山の農家の負担になっていることが少なくない。 この様な田んぼは耕作者が積極的に作っている場合は除き、山林へと地目変更をし次第に原野化、山林化していくのも仕方ないことだと思われる。 

 

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日本の人口はこのままいくと2050年には1億人を下回り、お米の消費量もそれに伴い下がるであろうから、中山間地域での稲作も必然的に整理されていくだろう。

 

長くなったので次回に続く。

次回は、では中山間地域での稲作に未来はないのか? さまざまな組み合わせや付加価値によって継続していく方法について考えてみたい。